こんにちは。高知県高知市で、情報処理支援機関として中小企業のIT活用をサポートしている、株式会社ICUの川島です。
先週、アサヒビールがランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の被害を受け、国内の複数工場が稼働停止に追い込まれました。
製品の出荷も滞り、流通現場にも混乱が生じています。
「まさかあの大企業が」という声も多く聞かれましたが、実はこの問題…中小企業にとっても他人事ではありません。
システムが止まれば、会社は止まる
もし、あなたの会社でパソコンやサーバーが突然使えなくなったらどうなるでしょうか。
見積書の作成、請求書の発行、資材の発注、営業管理や生産管理など、いまやほとんどの業務がデータとシステムに支えられています。
ランサムウェアは、こうした大切なファイルを暗号化して開けなくしてしまうウイルスです。
攻撃者は「復号の鍵が欲しければ金を払え」と脅迫してきます。
しかし、支払ってもデータが戻る保証はありません。
つまり一度感染してしまえば、業務が止まり、顧客や取引先にも多大な影響を与えてしまうのです。

「ファイル暗号化型」への備えが最優先
ランサムウェアにはいくつかのタイプがありますが、
中小企業が最も直面しやすいのが、この「ファイル暗号化型」です。
感染経路の多くは、メールの添付ファイルや不正なWebサイトへのアクセス。
日常のちょっとした油断が、重大な被害につながります。
では、こうした攻撃からどう身を守ればよいのでしょうか。
ポイントは、「被害を防ぐ仕組み」と「すぐに復旧できる仕組み」をあらかじめ整えておくことです。
被害を防ぐための基本対策
OSやウイルス対策ソフトを最新の状態に保つ
脆弱性を放置するのは、攻撃者に“ドアを開けっぱなしにしている”ようなものです。
セキュリティパッチやアップデートは、できるだけ早く適用しましょう。
メール・添付ファイルに注意する
主要な感染経路のひとつはメールです。
送り主が知っている相手でも、件名や文面に違和感があるときは開かないこと。
とくに、請求書や見積書、納品書などを装った添付ファイルには要注意です。
USBなど外部デバイスの扱いに注意
USBメモリ経由の感染は主流ではありませんが、自動実行機能をオフにしておくことでリスクを減らせます。
また、社内での使用ルールを定めることも大切です。
共有フォルダのアクセス制御を見直す
社内サーバーの共有ドライブは、誰でも編集できる状態だと感染が一気に広がります。
「必要な人だけが書き込みできる」設定にしておくだけでも、被害の拡大を防げます。
管理者権限を最小限に
社員全員にフル権限を与えると、感染時に全システムが暗号化される危険があります。
必要な範囲だけに権限を絞ることで、被害を局所化できます。
すぐに復旧できる仕組みを整える
データのバックアップは「分散」「多層」で取る
最も重要なのは、日頃からのバックアップです。
1つの場所にまとめて保存しておくと、感染時に同時に暗号化されてしまう恐れがあります。
クラウドと外付けドライブなど、異なる場所に複数世代のデータを残すことが大切です。
さらに、定期的に「復元テスト」を行い、実際に戻せるかを確認しておきましょう。
復旧手順と連絡体制を整えておく
バックアップだけでなく、いざという時の「手順書」と「連絡体制」を決めておくことも重要です。
誰が、どの順に判断し、どの設備を優先的に再開するのか。
これを平常時から共有しておくことで、復旧のスピードが大きく変わります。

「うちは大丈夫」と思わないことが最大の防御
サイバー攻撃の被害は、ある日突然やってきます。
どんな企業も、明日同じことが起きる可能性があります。
大切なのは、「自分の会社も起こりうる」と認識すること。
そして、今日からできる小さな備えを積み重ねることです。
バックアップの点検、アクセス権限の見直し、社員への注意喚起。
これらを習慣にするだけで、被害のリスクは大きく下がります。
サイバー攻撃そのものを完全に止めることは難しくても、
被害を最小限に抑え、すぐに復旧できる仕組みを持つことは、どの企業にもできます。
それこそが、これからの時代に必要な「デジタル防災」の考え方だと、私は思います。
今日からできる範囲で、自社の備えを見直してみてください。